守谷市の一件。何が問題だったのか。

産経新聞が「独自」として報じた事件(?)

<独自>立憲民主党の看板110枚を撤去 無許可設置に茨城県守谷市「おやめください」

市は5、6の2日間をかけて撤去。X(旧ツイッター)の公式アカウントで「無許可で立て看板を設置することは違法です。絶対におやめください」と訴える事態になっている

産経新聞

無許可で立て看板を設置することが違法。となっていますが、この件看板屋さんの目線で説明します。

当社は熊本市の看板屋さんですので、基本的に熊本市の条例を参考にしています。

守谷市のも調べてみましたが、総じて内容は大きく変わりません。

若干熊本市のほうが規定が細かいです。

(熊本県は細川県知事時代に京都市並に厳しくなったという説もありますが)

まず引用先から画像を見てみますと、広告の種別としては、「簡易広告」に当たります。

簡易広告には種類がありますが、その中で

立看板等

容易に移動させることができる状態で立てられ、又は容易に取り外すこと
ができる状態で工作物等に立て掛けられている立看板その他これに類す
る広告物又は掲出物件(これらを支える台を含む。)

熊本市 屋外広告のてびき

との規定があります。今回はこの、簡易広告の立看板に当てはまります。

さらに、

□営利を目的としない活動のために表示するもの(貼り紙、貼り札等、広
告幕、広告旗及び立看板等)
 収益を目的としない宣伝、行事、催物等。政治活動、宗教活動又は労
働運動のための宣伝、集会、行事、催物等
 表示期間:30 日以内
 表示面積:貼り札等、広告旗・・1 ㎡以下
立看板等・・2 ㎡以下
広告幕・・20 ㎡以下

熊本市 屋外広告のてびき

今回は「収益を目的としない政治活動の宣伝」に当たると考えられ、この場合は「設置届の提出が必要」となります。

設置届を提出すれば設置が可能で、熊本市の場合は立看板一枚につき150円の手数料がかかります。

調べてみましたら、今回の守谷市は1枚300円とのことで、300円×110枚で33,000円を手数料で払って届け出をおこなえば、設置は可能だったということになります。

また、この場合、禁止地域にも掲出が可能ですが、禁止物件には掲出できません。(熊本市の場合)

ここがこの件で、大事になってくるんですね。

禁止物件を確認してみましょう。

(熊本市 屋外広告のてびき)

この中に

(3) 街路樹、路傍樹及び都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律第2条第1項の規定により指定された保存樹

(4) 信号機、道路標識、歩道柵、駒止めその他これらに類するもの及び里程標の類
(5) 電柱、街灯柱その他電柱の類で、市長が指定するもの

熊本市 屋外広告のてびき

とあります。

街路樹や信号機への設置は、届け出をしていても熊本市では認められていないということですね。

守谷市の場合も、街路樹や路傍樹、信号機、電柱、街灯柱など、禁止物件はほぼ同じです。

ただ、守谷市の「守谷市屋外広告物条例事務処理の手引き」を確認してみますと

公職選挙法に基づく選挙運動のために表示するもの

という記載があって、これは熊本市と同じく、禁止地域にも禁止物件にも設置できるのですが。

守谷市の場合には、熊本市には規定がある

□営利を目的としない活動のために表示するもの(貼り紙、貼り札等、広告幕、広告旗及び立看板等)
 収益を目的としない宣伝、行事、催物等。政治活動、宗教活動又は労
働運動のための宣伝、集会、行事、催物等

という記述がないのですね。

ここが少し難しい。

今回は岡田幹事長の遊説を案内する内容の看板でしたから、公職選挙法に基づく選挙運動のために表示するもの。

という記載を、援用解釈するかどうかで変わってきます。

公職選挙法に基づく選挙運動。というのは、基本的に選挙の告示から投票日前日までを言います。

そう解釈すれば、今回の案件は「禁止地域に設置するのであれば全て申請が必要で、禁止物件への設置は認められない」となります。

まとめますと、今回の一件で違法とされる可能性があるのは

・届け出をしていない(手数料を払っておらず、設置責任者が明らかになっていない)

・街路樹、路傍樹など、禁止物件に設置している

の二点で、禁止物件に設置していることから、届出を行って設置しても撤去を命じられていた可能性があります。

そして、条例に基づき簡易除却を守谷市が行ったものと考えられます。

市長は,違反広告物のうち,貼り紙,貼り札,広告旗,立看板を,市長自ら除却するな
ど簡易的に除却措置をとることができます。(☞屋外広告物法第 7 条第 4 項)

守谷市屋外広告物事務処理の手引き

近年ではあまり見なくなったいわゆる立看板(ステカン)ですが、違法な設置はやめましょう。

また、冠婚葬祭に関するものなど、禁止物件に設置できるものもあります。

詳しくは、自治体名と屋外広告物を入力して、検索してみることをおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました